トカラヤギのルイ君と会えた日に、飼い主さんから聞いたお話です。
お話ししている間も、ルイ君は生えている草をおいしそうに次々もぎ取って食べていきます。ヤギは牛と同じように反芻すると教えてもらいました。
牛糞がなぜ肥料として優れているかというと、この反芻によって繊維が砕かれ尽くされているからだそうです。
「ルイ君は家では何をたべているんですか?」
と、お尋ねしたところ、
「家では、ドッグフードみたいな栄養食と牧草です。草だけだと栄養が不足するので。牧草は酪農家にもらいに行きます」
とのお答えとともに、
「近頃は、牛乳の消費が減って、それだけでは酪農家は経営が厳しくて、牛糞を作ったりされています」。
そう。戦後、学校給食に必ず付けるようになった牛乳。私たちの頃は、アメリカに押し付けられた脱脂粉乳を鼻をつまんで飲まされたものですが。
その後、都市伝説で、「牛乳を飲んだら背が高くなる」と広まり、それを信じてがぶ飲みした世代は、我々の子どもたちです。
果たして、高身長よりもアレルギーを生んだことはご承知の通りです。
どんな食品も、体内でうまく消化できるようになるには、数代かかると思われます。
よくたとえに使われるのはアメリカインディアンの糖尿病です。
もともとアジア人であった彼らはアメリカに移動してアメリカ原住民になりました。ヨーロッパから、彼らがそれまで食べたことのなかった高カロリー食が持ち込まれたことによって、糖尿病を発症し、絶滅に追い込まれたと云われます。蛇足ですが、日本人もアジア人ですから、糖尿病罹患率が高い原因は、インディアンと同じところにありそうです。気をつけましょう。
閑話休題。牛乳信奉者が増えるに従い、鼻炎などのアレルギーが増えました。
食事以外に牛乳を飲むということは、必然的に水分摂取量が増えます。
漢方的にいうと、体内に水が貯まるという現象が起こります。
余分な水は排出しなくてはなりません。そこで、花粉などの刺激があればこれに乗じて、鼻水として排出するというわけです。
お子さんの鼻炎アレルギーは、実際、牛乳を止めるだけで治ることが報告されています。
時代によって、健康法も変わるという見本のような話です。“昨日の友は今日の敵”。安易に時流に乗るよりも、粗食が自分を守るという原則を覚えておきましょう。
ところで、ここへきて酪農家の経営危機の救世主が現れたというニュースを聞くようになりました。
一つは、牛糞を発酵させて取り出したメタンガスから、発電するという取り組みです。
ガスでタービンを回して発電できるそうです。発酵中、外に臭いが漏れない工夫も施されているとか。これで牛さんも胸をはれます。
もう一つは、スズキ自動車がインドで開発している、バイオガスを自動車燃料にするシステムです。
インドは牛の王国ですから、それを集めて自動車燃料にできたら、ヒンズー教の神様もびっくり!でしょう。
創造主は何一つ無駄はお造りになっていない、と云われますが、人間の知恵あっての生かし方がまだまだ無限にありそうです。
役立たずの老人ですが、その進展を見ることで、元気がもらえます。
トンネルの先に光明が見えた酪農家のみなさまの船出に拍手しています。