こころあそびの記

日常に小さな感動を

二匹の保護犬

 

 穀雨の候。

 耕運機を操作されている男性に、  「いよいよ始まるんですね」

 とお声かけたら、わざわざエンジンを止めて、

「季節もんですから」

と、応えてくださいました。

「後ろからだったら、お写真撮ってもいいですか?」

 と、お断りして撮らせてもらった写真には大阪のビル群まで写っています。

 もしも、いつか農家に生まれるようなことがあったら、ここに生まれたい。

 でも、私の根気のなさは農作業には向かないと思い返し、直ぐに撤回して、彼の丁寧な仕事ぶりを見せてもらったことでした。

 

 

 畑の脇にきのこ発見!

 

 

 散歩途中。

 近頃ご無沙汰していた高齢の男性に久しぶりにお目にかかりました。

 挨拶を交わしていると、通りかかった自動車が停まって、運転していた男性が窓から顔を出されたのは、私と話していた人に挨拶するためでした。

 いち早く、犬好きの私の目にとまったのは、助手席のコーギー犬でした。

 「かわいいですね」

 「この子は虐待されていたんです。うちに来たときは、肋骨がはみだして見えている状態でした」

 「ええっ!保護犬ですか?」

 「そうです。一年半もの間、閉じこめられていたので、初めは懐かなくて」

 「でも、今はうれしそうなお顔してますよ」

 「やっとです」

 ご主人の後ろから顔を出した犬の表情は、満ち足りているような笑顔に見えました。

 

 

 彼らとお別れして、しばらく行ったところで、後ろから、痩せたビーグル犬が素敵な首輪をつけてやってきました。

 ビーグル犬にしては、静かで好戦的なところがありません。 

 「ビーグル犬には珍しいですね」

と、話しかけると、

 「この子のもともとの性格なんだと思います」

 そんな子もいるのかな。ビーグル犬というのは猟犬らしい動きとほえ方が特徴なのに・・と、懐疑的に見ている私に飼い主さんが足を止めて、説明を始めてくださいました。

 「実は、この子は保護犬でした。5歳まで、猟犬を多頭飼いしている狩猟者のもとで過ごしていたのですが、もともとが気が弱く、他の犬に虐められていたようです。だから、この子を飼うにあたっては、三ヶ月間、毎週末に会いに行って慣れるのを待ちました。私達の前にも何組か挑戦なさったようでしたが無理だったようで」

 ふつう、ビーグル犬と散歩中に出会うと、うちの犬につっかかってくるか、鳴き声を上げるものですから、どこか変だなと思ったのは、そんなわけがあったのです。 

 「譲渡の合格が出た日は、『すぎな!』(施設内で呼ばれていた名前)と呼ぶと、私のところに来てくれたんです。今でも、主人がいるとご飯も食べないんで、この子の食事中は、玄関で主人は待つんです(笑)」

 

 

 今日は二頭の保護犬に遭遇しました。そのことで、七十年生きてもまだまだ知らない世界が山ほどあることを教えられました。

 心根の優しくない人にはできないことです。もっと言えば、辛抱強く待つことも必要な条件です。

 自分にはできないことをなさる方があると知れば、他者への敬いの心を持つことができます。

 それが、地球上に生きる者どおし、他者の存在を認め合うきっかけになればと念じます。

 地球規模で認め合うことができたら・・それは、21世紀の現在も叶わない絵空事とは虚しいことです。