こころあそびの記

日常に小さな感動を

秋深まる

 

 「今日は11月の気温になります」という天気予報を、友達とランチするねん、と出かけようとする娘に伝えました。

 長袖カットソーにお気に入りの上着を着込んで、ブーツでもいいかなと最終チェック。もちろん大丈夫だよと応えて送り出したことです。

 

 いつの間にか、すっかり晩秋の趣きに置き換わった庭にカンタンらしき弱々しい虫の音があわれを誘っています。こないだまでズボンの足元に大量について困ったひっつき虫が、いつの間にか数を減らして、庭が静かになりました。

 

「月見ればちぢにものこそかなしけれ

 我が身ひとつの秋にはあらねど」

             大江千里

 

 

 心理学的には、晴れたらポジティブ、天気が悪いとネガティブな心理状況になるといわれます。

 しかし、夏という活動期のあとに秋という鎮静の期間がやってくるというサイクルがあるから、私たちは心のバランスを保って生きることができるのです。

 そして、秋といっても晴天の日もあり、曇天の日もあることによって微調整できるように仕組まれていることは有り難いことです。

 

 繰り返しですが、昨日まで交感神経優位の日が続いて、私はほとほと疲れ果てていました。そこからの脱出の糸口が見つからず、興奮した体のせいで物事に集中できず、本を読もうとしても文章に集中できなくなっている自分に驚くほどでした。

 そんな私にとって今日の曇天は心をニュートラルにもどす絶好薬でした。

 

 

 静かになった部屋でゆっくりと本と向き合える幸せで満たされています。

 読みかけの長谷部愛さんの本の第4章「豊かな日本の雲と雨」を、歌川広重葛飾北斎の絵画とともに楽しませてもらいました。

 空を見るのが好きで気象予報士になられたのですから、彼女の空好きは納得できます。が、当たり前といえば当たり前ですが、浮世絵師である広重や北斎も空を一生懸命観察した人だったのですね。

 描かれている物語は、空の様子から始まるなんて、絵心のない私には初耳でした。

 

 

 青い空色が広がる日は、心の底から深呼吸。雲が広がる日はその美しさに見とれ、曇天は心休ませる日。

 晴耕雨読。とは、その日のお天気を感じた体に従えばよいことを教えてくれています。

 静かな時間が私を蘇らせてくれました。