こころあそびの記

日常に小さな感動を

大阪を歩く


 
 同じ場所に行くのに、同じルートは避ける習性がありまして、今日も、地下鉄ではなく、大阪駅前からシティバスで上六に向かいました。
 バスは窓の外が見えるから、遠足気分、童心に帰って右左と楽しめます。
 特に、この62系統のルートは大阪城を眺めながら、遠足どころか、旅行気分に浸れます。
 お時間ある時にはお試し下さい。大阪城で降車して散歩というのもお勧めです。

 午後からは、公立大学公開講座です。
 幸い雨は降っていません。歩いて難波まで移動することにしました。

 まずは、素通り出来ず、「いくたまさん」(生魂神社)にお参りしました。
 私の小学校の同級生が、ここのお祭りで太鼓を叩いていたのを、一度だけ見たことがあります。教室では見ることのない生き生きした彼の姿を今もうっすら覚えています。

 生魂神社は大阪を代表する歴史ある神社なのに、周辺の開発のため、写真のような告示がされていました。
 

 これを読むと、大阪の歴史そのものです。
 織田作之助は、旧高津中学出身ですから、まさに当地を地盤として活躍しました。
 じつは、母の兄と高津中学の同級生でしたので、おばあちゃんの家によく遊びに来たと聞いています。
 「さくちゃん」は大阪の人でした。
 ”いくたまさん“の立て看板を見て、久しく忘れていたことを思い出したことです。

 上町筋、谷町筋を越えて、松屋町筋に下りるには、随分落差がありました。
 上町台地の端はここにあるのかと、歩かなければ分からない高低差に、気分はブラタモリでした。

 懐かしい下寺町。お寺が並んでいます。
 大阪場所の時は、お相撲さんを見かける区域です。

 難波からの帰りも、梅田まで歩いてみることにしました。
 梅田~難波は、それほど遠くありません。
 たまには、青々とした銀杏並木の御堂筋もいいものです。しっとりとした静かな通りをゆっくり北上しました。


 「芝翫香」さんが、御堂筋に出店されていたことにびっくりしました。自分が知ってるお店ががんばっておられるとほっとします。

 歩き出す前、腹ごしらえに高島屋の一番奥にある「今庄そば」に行ったのですが、なんと、来週で閉店とのことでした。最後と聞いたファンの方々で、いつもは閑散としている店内に活気があったことが、寂しさをかきたてるという模様になっていました。
 今庄という地名がそそったお蕎麦の味でした。難波に行く楽しみが一つ減って残念です。

 鴨長明という人はこんなことに深い感慨を覚える質だったのではないでしょうか。
 でも、彼がそう書いてくれたから、諸行無常追体験できます。
 御堂筋を歩きながら、ガスビルがなくなることや、南御堂がハイカラになったことなど、生き残りをかける世情を実地で知ることになりました。
 形を残すか、生き様を残すか。
 それとも、消えてしまうか。
 いずれにしても、生きることは真剣勝負です。

 大阪の町歩き。老人の運動と記憶おこしによろしいようで。