玄関を出た瞬間、凛とした朝の空気。思わず冬が来たことを肌で感じました。
季節感がなくなったなんて嘘。間違いない立冬を感じられるかどうかは、人間の感性次第なのかもしれません。
今日はまた、患者さんから素敵なお話を伺いましたので披露したいと思います。
いつも笑顔のおじいさん(90歳)が、いつにも増してニコニコ顔で、
「あのね、一人住まいしてる93歳の兄が、先日の夕方風呂に入ったわいいけど、膝が悪くて浴槽から出られんようになりましたんや。夕方6時から7、8、・・・朝まで12時間浴槽に浸かりきりでした。翌朝になって、隣の奥さんが、あれっ!郵便受けに朝刊が刺さったままになってると気づいて下さったことから、助かったんです!」とお話して下さいました。
その事件の一週間前に、久しぶりに息子さんと一緒にお兄さん宅を訪ねて元気を確かめ合ったところだったといいます。
こんな時に思うのは、目には見えない守護の力の大きさです。私達は見えない誰かに守られているから、今日も生きている。そのように思えるのは、長く生きた人か、大きなアクシデントを経験した人かもしれません。
このように、人さまのお話を伺うのが好きなので、講演会というものにも何度か行きました。
子供がまだ小さかったのに、どうしても曽野綾子さんに会いたくて、近江八幡まで聞き行ったことがあります。思った通りに美しくて気品と知性があって、この冒険はよい思い出として、今でも鮮やかに残っています。
先年亡くなられた村上和夫先生の講演会も拝聴しました。
遺伝子解析という先端科学者なのに、提唱されたのはsomething great(サムシンググレート)。科学を究める方は、その顕微鏡の中の世界の美しさに感動されるといいます。
それは、宇宙から地球を見る目と同じだと思います。
誰がこの世界を作ったのだろう。そういう考えに至る現象なり、事実なりに出会えるのも、研究を突き詰められたからこそです。
あとに続く研究者たちにも科学的な成果とともに、実際に見た不思議な世界を伝えてもらえることを期待しています。
コロナ禍はインターネットを急速に拡大しました。
なんと、講演会もYouTubeで配信されています。
昨晩は、渋沢栄一のお孫さんである99歳の鮫島純子さんのお話を伺いました。
テレビの「青天を衝け」が事実に基づいた作り方をしていることを教えてくださいました。吉沢亮君の睫毛に引きづられて観てきましたが、膝を正してラストまで観ることにした次第です。
心に残ったのは子育ての話です。
テレビでも、「あんたがうれしいだけじゃなくて みんながうれしいのが一番なんだで、人は生まれてきたそのときから一人ではないんだよ いろんなものとつながっているんだよ」と栄一に母親が話してきかせるシーンがありました。
日本中の人が感動したこの台詞は事実だそうです。
栄一の生涯を貫く、日本を守って、世界と対等に付き合える国にせねばという思いの根っこはお母さんの思いに発端があったのです。
鮫島さんは、母親の大切さを切々と訴えられました。せめて、一つ、二つ・・・九つと「つ」のつく間は側にいてあげてほしい。
一番接する時間の多い母親の言葉を聞くでもなく感じて育つのが子供である、と。
こんな言葉を聞いたことはありませんか。
「思ったように子供は育つ」と。以心伝心、言葉でなくとも思いは伝わるのです。
責任重大の母親業が、学費が嵩むために、生活費をカバーするために削られて、希薄なものになる恐れをもっと真剣に危惧したいところです。
政治のことはわかりませんが、その手助けこそ一番大事と念じています。