こころあそびの記

日常に小さな感動を

室生寺の春

f:id:snowrumirumi:20220412184818j:plain


 お香もさまざまあれど、興福寺の東金堂の入り口で購入できる『興福薫荷』の香りが好きです。
 今朝、燻らせようと箱を開けたら残りが少なくなっていたので、これはそろそろ行くべきかと思いつき、バタバタと準備しながら、近頃心にかかっていた室生寺リーフレットを見たら、こちらも元は、興福寺が開基に絡んでいると書いてあるではありませんか。
 ならば、今日のところは心に従ってみようと、室生まで遠出をしてみることにしました。
 
 途中、八木駅では、向い側ホームに特急『火の鳥』が入ってきて、乗り鉄の私を喜ばしてくれました。そういえば、今日、御披露目になった『あをによし』は京都線に採用されるみたいです。大阪近郊に残る貴重な景色が見られます。人気出てほしいなぁ。不振続きの鉄道業界の起爆剤になれ!

f:id:snowrumirumi:20220412201010j:plain

 室生口大野で降車して、大野寺の磨崖佛を先ず見に行きました。
 しだれ桜の花吹雪の中、小さなお寺の門をくぐりました。
 ご本尊の地蔵菩薩の前で、アブが一匹ホバリングして、道を空けてくれません。まるで、邪心を捨てた者のみ通すと、申し渡すお勤めをしているように思えました。
 お目当ての磨崖佛は室生川の対岸を彼岸と見立てて大きな岩に弥勒菩薩様が彫られています。いつもバスの中から拝むだけなのですが、初めてゆったりと拝観できたことが一番目の喜びでした。

f:id:snowrumirumi:20220412201126j:plain

 次に向かったのは、室生寺の上流にある龍穴神社です。
 バスを降りるとき、運転手さんに、
「龍穴神社はここだけですか?」と尋ねましたら、
「僕はここしか知らないです」と応えられました。
 以前、タクシーで連れて行ってもらった場所ではなかったので、あれは夢だったのかと。
 いやぁ、今日伺った『龍穴神社』はすごいパワーでした。
 気持ちがすーっと澄み渡るような場所でした。
 今日、ここに来れたことがありがたくて、心からの感謝を捧げたことです。
 龍神は水の支配神。古来、日照りとなれば雨乞いを、豪雨の時には止んでくれるようにと人々が祈ってきました。その神宮寺が室生寺のようです。

f:id:snowrumirumi:20220412201242j:plain

 最後に室生寺へ。金堂からあの十一面観音像が宝物殿に移されたこと。弥勒堂からも、釈迦如来座像が宝物殿へ。そして、平成十年の台風のよる倒木被害で五重塔が壊れたニュースで知ったときのショック。
 それらを、今日、この目で確かめて参りました。
 宝物殿に移られた二像は、以前よりもはっきりと見えるようになったことは良かったといえるかもしれません。
 平安時代は、こんなに美しい色使いをしていたことに驚きます。それが千年以上の時を経てもうっすら残っていることにも。
 しかし、この佛さまたちが、以後、神聖な室生の空気に触れることがないことを気の毒に思います。篭の鳥になってしまわれた。日の差し込むことの難しいお堂の隅っこにおられた十一面観音や、弥勒堂の厨子の中の釈迦如来は二度と見られないことに落胆も拭えないことでした。

f:id:snowrumirumi:20220412201400j:plain

 五重塔の修復は完了していて、今から咲き始めるシャクナゲと一緒に写真に収まる日を待ち遠しく思っているかのようでした。そして、境内のどこを歩こうが、桜吹雪の中でした。
 こんな春は経験したことがありません。まさに、至福の一日でした。

f:id:snowrumirumi:20220412201419j:plain