こころあそびの記

日常に小さな感動を

若ごぼうの炊き合わせ

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 八百屋さんのある商店街が近くになければ、スーパーで間に合わせてしまうことが多くなりました。
 親元を離れた頃は、旬の野菜が店先に並んでいるのを見て、買おうかやめようかと迷ったものです。そんな様子を察して店の人が調理法を教えて下さいました。そうやって、一つ一つレパートリーを増やしてきたのです。
 さて、今年も早春の野菜が店頭に並ぶ頃になりました。
 これらが、各家庭の食卓に提供されると、寒い毎日、到来はまだまだと思っていた家族も春が近づいていることに気づいてちょっと嬉しく思うのでは。
 食卓は、そんなちょっとしたことで、会話を弾ませ華やぎが出ます。
 スーパーはスーパーでも、野菜、果物、精肉、魚介など、各部門のバイヤーの見立てがしっかりしていると思わせるスーパーが好きです。
 昨日、若ごぼうを見つけたお店もその一件。袋に入りきらない長いごぼうを抱えて意気揚々と帰ってきました。
 早速、おあげさんと炊き合わせました。

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 さっと湯を通して、薄味をつけます。
 ぐだぐだに炊いてしまうと、残念なことになります。 
 料理人は”イラチがよい“とは三国シェフの名言ですが、こんな時こそ、それは本当だと実感します。まだかなまだかなと横に付いて牛蒡の声を聞きながらの調理が美味しく作る極意だと思います。
 幸いに、昨日はシャキシャキ感が好評で一安心しました。”イラチ“の面目躍如といったところです。

 ところで、春先に出てくる野菜はなぜ苦味を持つものが多いのでしょう。
 菜の花、ふき、蕗の薹、蕨・・
 味に効用があることは度々お伝えしている通りです。
 苦い味は、五行では心を応援する味とされています。
 長い冬、動物たちは基礎代謝を最小限に落として、越冬あるいは冬眠して過ごしてきました。人間も同じように冬仕様で耐えてきました。
 活動が少なかったため、体内には老廃物が溜まっています。そこで、役立つのが苦味です。
 苦味は、「燥」、「降」「清熱」など意外に複雑な性質を持っています。
 代表的な働きは、溜まった水分を乾かし、胃腸を働きやすい状態にします。「良薬口に苦し」と昔から飲まれている苦味健胃薬などを思い浮かべてもらえたらイメージが繋がるかと思います。
 自然界はお手本です。熊は冬眠から覚めたら、まず、蕗の薹などを食べることが知られています。それは、意味のあることだったのです。
 苦味のある早春の食材を食べることが、春から始まる活動期に乗り遅れないための秘策です。
 コーヒーやビールを飲んでるから自分には不要と思う方がいらっしゃるかもしれません。確かにこれらも苦味を持ちますが、日常的に欲しくなるのは主に「降」という性質を利用してストレスで上がった気を下ろしているのです。
 
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 春先に芽を出す苦味を持つ食品で目覚めさせた身体はスムーズに活動を始められます。
 爛漫の春になったら遠足のお供はお寿司です。春はウキウキする気持ちをコントロールする酸味がポイントです。それは、また次回に。
 味の性質を知って、季節を上手に楽しみましょう。