こころあそびの記

日常に小さな感動を

野焼きの香り

f:id:snowrumirumi:20220410112138j:plain


 モーニングコーヒーを淹れて、テレビをつけたら、NHKEテレ『こころの時代』が映りました。
 今朝は、遠藤周作著『深い河』をもとにお話されていました。
 ”深い河“というタイトルにこめられたものは何か。深い分断を渡りきっていく勇気。または、自分の中の深い闇を泳ぎきる英断も含まれているのかもしれません。
 「苦しみの中から喜びが生まれる」(ベートーベン)と下敷きに大書していた小学生であった私ですから、今日こそは、お散歩の話は中断して心の内を書きましょうと決意して、散歩に出かけました。

f:id:snowrumirumi:20220410114221j:plain

 外に出るや否や、そんな決心は砕かれました。

 若緑色に萌え出る新芽の勢いがこの身にも湧き出してくるように感じられます。
 二十メートル超えの樹高を誇るエノキの大木が緑の新芽を吹いています。おーいと呼んでも届きそうにないから、太い幹に手を当ててみます。内側で水が流れているなんて信じられないほど、堅い樹皮は静まりかえっていました。
 樫の木が花序を垂らしています。秋の収穫を約束するかのように。
 クスノキの落ち葉を拾って揉んでみると、微かな香りを匂うことができました。
 こんな香りが森を守っているのかと思うと、自然の循環の合理性に驚くばかりです。

f:id:snowrumirumi:20220410115148j:plain


 間に合いました!
 今朝は、“fresh-egg”の販売に間に合いました。
 青いクーラーボックスをこわごわ開けたら、三十個ほど卵が入っていました。
 その卵を生んでくれた鶏たちが「コケコッコー。太陽が上ってきたよ」と鳴き続けています。
 「ありがとう。3つもらっていくね」と三百円を納めて、ボックスを閉めました。
 家に帰り着いて直ぐに食べた卵かけご飯の美味しかったこと。早起きは三文の得を、お腹で実感したうれしい朝でした。

f:id:snowrumirumi:20220410120206j:plain


 久しぶりに、チャーリーたちに会いたくて放牧地に行ったら、後ろから、軽トラックに乗ってやってきたのが、見かけたことのない茶色のヤギでした。
 「おはようございます。この子は種類が違うのですか?」
 「トカラヤギといってトカラ列島など鹿児島以南にいるヤギです。島では、肉用として飼っているようです。私は食べませんよ」
 へぇ、知らなかった。ヤギはハイジの世界にいるもので、お乳を貰うために飼うものだと思っていました。
 おじさんがいっしょに積んできた新鮮な大根の葉をもりもりと食べる姿を夢中で写真に収めたことです。
 
f:id:snowrumirumi:20220410123241j:plain

 こんな出会いがあると、人生は何かなどという難しいテーマは吹っ飛びます。
 野焼きの煙が風になびいています。
 この匂いが大好きです。お香はこうやって生まれて古来、人々を癒やしてきました。
 そして、お香の煙は天に向かいます。香炉を燻らせて天上人に届くようにと誰が考えたのかと、この世に役立ちそうにないことを夢想するのが、また好きなのです。